狂犬病は犬だけでなく、人間を含む哺乳類全てに感染の可能性があり、発症すると100%近い確率で死に至る恐ろしい病気です。ワクチンで発症を防止することはできますが、病気自体への治療法は現在も見つかっていないのが実情で、世界では毎年何万人もの命が狂犬病によって失われています。
日本では狂犬病ワクチンの接種が義務化されていることもあって1957年以降の発症が見られませんが、グローバル化が進む昨今、海外から持ち込まれるリスクは否定できません。
定められた規則に従って狂犬病ワクチンの接種を受けるようお願いいたします。
狂犬病の症状には「狂騒型」、「麻痺型」という二つの種類がありますが、発症例が多いのは狂騒型です。狂騒型の状態になった犬に見られる症状としては、反応が過剰になり、何にでも噛みつくようになるなど興奮した状態が続きます。その後全身が麻痺して、昏睡から死に至ります。
麻痺型の場合は発症初期から麻痺がおこる特徴が知られています。
狂犬病ワクチンの接種は、生後91日以上経過した全ての犬に対して法律で義務化されています。
混合ワクチンの接種から1か月程度は間隔をあけることが推奨されているので、初めて摂取するのは生後5~6か月頃が一般的です。その後毎年1回の予防接種で免疫を維持することができます。
登録済みの成犬
全ての犬は毎年1回の狂犬病ワクチン接種が義務化されています。
推奨期間として4~6月が設定されていますが、当院では年間を通してワクチン接種が可能です。
未登録の成犬
生後91日を経過したら、できるだけ早く狂犬病ワクチンの接種を行いましょう。
混合ワクチンは1回の接種で数種類の病気を予防できるメリットを持っています。
生後初めて接種する時は2~3回に分けて、一定間隔をあけながら接種しますが、翌年以降は年に1回の接種でよくなります。
大切な動物の健康を守るためにも、社会に病気を蔓延させないためにも、混合ワクチンは毎年必ず接種するようにしてください。
生後初めてのワクチン接種では体内に免疫が十分にできないこともあります。それを踏まえて混合ワクチンの接種は3~4週間ごとに2~3回接種するようになっています。
ワクチンを接種すると下痢、嘔吐、痛み、腫れなどの症状が見られることもありますので、異常があれば遠慮なくご相談ください。
また、当院では免疫がしっかりできるまでは出来るだけ他の動物との接触を避けること、体力の消耗を抑えることなどを考慮した適切なトリミングやシャンプーの時期なども、予防接種の際に飼い主さまに詳しく説明を行っています。
犬の病気
犬パルボウイルス感染症 |
嘔吐や下痢が激しく、食欲がなくなって衰弱していく病気です。子犬の時に感染すると重体化することも多く、感染力の強さも特徴です。 |
犬コロナウイルス感染症 |
子犬の時期に発症すると下痢や嘔吐などの激しい症状が見られます。感染力が強い病気ですが、成犬なら胃腸炎などの比較的軽い症状で治まるのが一般的です。 |
犬ジステンパー |
犬ジステンパーに感染している犬の目ヤニや尿、鼻水、唾液などから感染する病気です。症状としては下痢、鼻水、目ヤニ、高熱などが見られ、けいれんや麻痺を起こすこともあります。致死率も高いことで知られています。 |
犬伝染性肝炎 |
目の白濁、下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの症状が出る病気です。幼い時期に発症した場合、症状が見られる前に突然死に至るケースも見られます。 |
犬レプトスピラ感染症 |
犬レプトスピラ感染症は症状が多様なことや、人間にも感染することで知られています。
イクテロヘモラジー型であれば、黄疸や歯肉からの出血などの症状があります。
カニコーラ型なら脱水症状、筋肉の痛み、嘔吐、発熱などが見られます。急性であれば数日で死に至ることもある病気です。 |
犬アデノウイルス2型感染症 |
乾いた感じの短い咳が続き、鼻水、くしゃみ、発熱が見られる病気です。肺炎になることもあります。他の病原体に混合感染するとさらに症状が重くなります。 |
犬パラインフルエンザウイルス感染症 |
鼻水、発熱、咳など、症状が風邪をひいた時に似ています。感染力が高いことで知られており、二次感染や混合感染で致死率も高い病気です。 |
猫の病気
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ) |
初期症状としてリンパ節の腫れ、発熱が現れますが、その後症状が見られない時期があります。しかし、ウイルスの再活動が始まると免疫機能の低下が起こり、慢性的な下痢、口内炎、腫瘍などが表れやすくなって死に至ることもあります。
ケンカのキズなどからの感染が多い病気としても知られています。 |
猫カリシウイルス感染症 |
くしゃみ、鼻水、発熱など風邪に似た初期症状が見られますが、舌炎や口内炎などから腫瘍に発展したり、肺炎を起こしたりすることもあり、死亡例もみられる病気です。 |
猫ウイルス性鼻気管炎 |
くしゃみや咳から飛沫感染することで広まる病気です。鼻水、咳、くしゃみなどの症状から「猫風邪」という言い方もされますが、結膜炎や口内炎も見られます。 |
猫汎白血球減少症 |
排泄物や土壌などから感染することが多い病気です。白血球が減少するので嘔吐や下痢、発熱などの症状が激しく起こります。感染力も死亡率も高く、特に幼年期の猫が発症した場合は死に至る可能性が高いことで知られています。 |
クラミジア感染症 |
目が充血したり、腫れたりすることで知られていますが、咳、鼻水、くしゃみなどの症状も見られますし、肺炎になることもあります。感染した猫との接触が感染理由で、死亡することもある病気です。 |
猫白血病ウイルス感染症 |
初期症状として呼吸困難や発熱が見られます。その後しばらくすると症状が見られなくなりますが、数ヶ月、数年たってから再発することがあり、再発後は免疫力の低下から、脳神経疾患、腫瘍、白血病などさまざまな症状に至ります。発症後に完治する例はほとんどなく、7割から9割の猫が1.5~3年の間に発症、死亡すると言われています。
既に感染している猫とケンカやグルーミングをした際に、血液、涙、唾液などから感染する病気です。 |
ワクチンを接種した後は、食欲の低下、痛みや腫れが出ることもあり、普段より元気がないことなどもあります。接種後2、3日はシャンプーやトリミング、激しい運動、入浴など、体力を使うことは避けるように心がけてください。他に個別の注意事項があれば、接種後飼い主さまにご説明いたします。
場合によっては下痢や嘔吐、発熱、けいれん、ふらつき、腫れなどが起こるケースもあります。気になる症状があれば早めに当院にご相談ください。
フィラリア症は血流が悪くなって、腎臓、肝臓、心臓などに不調を起こす病気で、心不全のような重篤な状態になることもあります。
蚊に刺されることによってミクロフィラリアが動物の体内に侵入し、肺動脈や心臓に寄生することでさまざまな症状が起こります。
感染後も症状が現れないことが多いため、気が付いた時には重症化しているケースも少なくありません。
寄生したフィラリアを駆除することは不可能ではありませんが、投薬、手術のどちらも動物に負担を掛けますから、しっかり予防を行いましょう。
猫のフィラリア症
フィラリアは犬が感染する病気と考えている人も多いですが、猫にも多く見られます。1割程度の猫が感染しているというデータもありますから、発症するリスクも決して低いわけではありません。
症状としては食欲不振、吐き気、咳などに加えて呼吸困難も見られ、症状が非常に重くなることもあります。また、症状があまり現れないのに突然死亡してしまうケースも報告されています。
猫のフィラリアは犬の場合に比べると、治療や診断方法がまだまだ確立できていないのが現状です。そのため当院では、飼い主さまに予防の重要性を呼び掛けています。
- 散歩に出かけたがらない
- 散歩中に歩きたがらなくなる
- いつもより元気がない
- 寝ていることが増えた
- 血尿が見られる
- 食欲がない
- お腹に水がたまる
- ふらつく
さまざまなタイプのお薬のご用意があります。
錠剤(小さく与えやすい) |
ご飯やおやつにくるんで与えます。チュアブルを好まない動物におすすめです。 |
チュアブル(フレーバー付きのおやつタイプ) |
おかしやジャーキーのように食べられるタイプです。様々なフレーバーがあり、おやつが大好きな動物におすすめです。 |
注射 |
1回の注射で1年間予防することができます。 |
スポット製剤 |
背中に滴下するタイプです。錠剤やチュアブルが苦手な動物におすすめです。 |
※マダニやノミの駆除を兼ねるもの、体内に存在するフィラリア以外の寄生虫を駆逐するものもありますので、まずは当院にご相談ください。
予防期間
フィラリアの予防期間は蚊の活動時期を考慮して5~12月に設定されています。しかし近年は気候が変化していることもあるので、当院では予防の時期に注意を払っています。
ノミは一度動物の体に寄生すると簡単には離れてくれないことや、繁殖力が強いことから注意を要する必要があります。周囲温度が13度を超えていれば1回で50個もの産卵を行って、どんどん増えていきます。
アレルギー性の皮膚炎を起こすこともありますし、ノミが寄生する量が多ければ貧血に至るケースもあります。人間にも取りつきますから油断できません。
成虫以外は肉眼では見えませんから、定期的な駆除が欠かせません。
サナダムシ症(瓜実条虫症)
ノミの体内にはサナダムシが潜んでいることもあり、動物や人間の体内に寄生することもあります。
猫ひっかき病
感染している猫に引っかかれたり噛まれたりすることで広がり、人間にも感染します。発症した人はリンパ節の腫れや発熱などの症状が見られます。
ダニにはさまざまな種類がいますが、一番注意しないといけないのはマダニです。
マダニは犬や猫の体に寄生して血を吸います。相手の皮膚にセメントのようなものを塗りつけて口を固定するので、無理に引きはがしてもあごの部分が残ります。その部分は化膿を起こす原因になりますので、動物病院で駆除してもらいましょう。
また、マダニはさまざまな病気を媒介しますから、しっかりと駆除、予防を行うことを心がけましょう。
ダニ麻痺症
ダニの唾液内にある毒性の物質で起こる神経障害のことです。
日本紅斑熱
紅斑熱リケッチアによって頭痛や発熱などの症状があらわれます。
おやつタイプ |
スポット製剤はかゆみを起こしたり、滴下した場所を掻いたり舐めたりするリスクがあります。おやつタイプはそれらを防ぐもので、口から与える薬です。月に1回の投与が目安です。 |
スポット製剤 |
動物の首の後ろに垂らすことで効果を発揮する薬です。おやつタイプや飲み薬がニガテな動物に向いています。毎月1回の投与が基本です。 |
※毎月ではなく3か月に1回の投与で効果を保つ薬もあります。希望される場合はお気軽に当院にご相談ください。